「事実」という言葉の意味・使い方 & 「事実のような」情報との区別

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ビジネスシーンに限らず日常生活などにおいても、問題解決を図ったり意思決定をおこなったりする際には、「事実」を正しく捉えることが重要な意味を持ってきます。

「事実」は絶対的なものなので、誰が何と言おうと「事実」は「事実」であって、多くの「事実」が反映されれば反映されるほど、問題解決や意思決定などのストーリーの真実性は増します(※下欄参照)。従って、疑問点や興味を持った点についてはデータ取得や分析、言語情報での取材などの手法でその調査方法の元での「事実」を確認していき、真実性を高めることで説得力のあるストーリーを作り上げていきます。
(※「事実」と「真実」については別記事『事実と真実』、もしくはこちらの記事(東洋経済ONLINE内記事)を参照ください)


しかしながら、残念なことに我々の周りには「事実」以外に、「事実のような」情報も溢れています。
このブログ記事では、ビジネスシーンにおける「事実」という言葉についての説明と、気をつけて欲しいことについて書き記しますので、以下のことを学ぶことができます。

  • 「事実」という言葉の意味
  • 「事実のような」情報の例
  • 「事実」と「事実のような」情報の分類に関する手法・フレームワーク事例
  • 結果として「事実」と「事実のような」情報を区別する能力が向上する

「事実」という言葉の意味・使い方

「事実」という言葉の意味と使い方について再確認しましょう!

「事実」とは、実際に起こった嘘偽りのない事柄のことです。誰にとっても嘘偽りがなく、その確証が得られる情報であり絶対的な事柄です。「事実」という言葉については別記事『「事実」と「真実」でも説明していますので是非参照してみてください。

従って、ある事柄を「事実」とするのであれば、自らが嘘偽りがないことを証明できるか、もしくは「事実」としての出所を明らかにできなければいけません。これをビジネスシーンで考えると、ある事柄をデータや数値で明らかにしたり、データや数値の出典を明らかにしたり、漏れの無い論理で説明するなどが重要になることを意味しています。

議論の出発点となる「事実」が間違いであった時ほど無駄なことはありませんし、誰かが言ったことは全て「事実」のように扱われるような組織風土では後々の意思決定への影響が大きいため、常に「事実」を捉える姿勢を持ち続けるようにしましょう

では、「事実」を捉える姿勢を持ち続けるためには日常どのようなことを習慣づければいいのでしょうか?
まずは、以下の2つについて日々努力をし習慣化していきましょう。

  1. データ化、数値化をする
    事実を示すデータや数値を準備することを意味します。
    具体例としては「毎月の売上高」「四半期ごとの利益率」「過去半年の株価変動」「過去一年の来店者数推移」「製造不良率」「製造原価率推移」「顧客満足度調査結果」など様々な指標があります。「事実」とする事柄そのものをデータ化、数値化します。
    限定された対象範囲であれば、全てに対して「長さは〇〇㎝」というように記述可能ですが、対象範囲が大きいもしくは無限に続く場合は標本サンプルに対してデータ化、数値化して統計的に全体を推測する方法をとります(記述統計学と推測統計学)。
  2. 「事実」と「事実のような」情報を区別する
    見たり聞いたりする情報が「事実」なのか「事実のような」情報なのかを区別することを意味します。
    我々の周りには「事実のような」情報も溢れています。「事実のような」情報を「事実」として扱わないことが重要です。
    具体例やその区別のしかたついては下にまとめてみました。

「事実のような」情報について

注意すべき「事実のような」情報について理解しておきましょう!

前述のとおり、我々の身の回りには「事実」情報とともに「事実のような」情報も溢れています。
「事実のような」情報には、まだ確証が得られていないもののほぼ「事実」と考えられる情報から、意図的に捏造された情報まで多種多様でその判断も容易ではありません。以下に「事実のような」情報を、内容が客観的な場合と主観的な場合に分けて分類してみました。得られた情報が、以下の「事実のような」情報に当てはまる可能性を常に吟味する習慣をつけましょう。

また、「事実」か「事実のような」情報なのかを区別する基本的な確認(テスト)方法も載せておきますので、是非習慣化に役立ててみてください。

>客観的ではあるものの「事実のような」情報

  • 推定
    ある事実をもとに推しはかって定められたもののこと。
    法律的には、ある事実や法律関係に基づき反証が成り立つまで正当と仮定されたものを指す言葉でもあります。「推定年齢」や「推定死亡時刻」などがこれに当てはまります。
  • 推量・推測・推察
    一般的にそれぞれ以下のような場合に使われます。
    推量:広い意味で推しはかること
    推測:ある事実や状況から推しはかること
    推察:ある事実や状況から、特に気持ちやおかれた立場を推しはかること
  • 思い込み
    事実でないことを事実と信じる状況のこと。
    相手は「独身」だと思い込んでいた、電話口の男性を「息子」だと思い込んでいた などです。
  • 噂・第三者から伝え聞いた情報
    他人やSNS、ネット上からの情報で、事実であるように客観的に表現されたもの。
    フェイクニュースや誇大広告などです。

>主観の入った「事実のような」情報

  • 意見
    自分の考え(主張や見立て、解釈など)のこと。
    事実と混在している場合もあり、事実と意見の区別が必要となります。
  • 感想
    ある物事について思ったことや感じたこと。
    「ある物事」が「事実」かどうかは見極めが必要です。
  • 想像・憶測
    一般的に以下の意味で使われます。
    想像:事物や現象を頭の中に思い描くこと、またはその内容
    憶測:明確な根拠なく、いい加減に推しはかること
  • 創作・捏造
    一般的には以下のような理解で使われます。
    創作:事実ではないことを事実のように作り上げること
    捏造:実際無かったことを故意に事実のように仕立て上げること
    ただし、世間一般では「創作」は芸術やビジネス的な著作物のイメージで、捏造は悪意を持った行為のイメージがありますね。
    いずれにしても、内容として元々その「事実」はないものです。
  • 噂・第三者から伝え聞いた情報
    第三者からの情報に、尾ひれはひれがついたり、内容が盛られたりした状態の情報です。
    大元の情報は「事実」の可能性もあるため、事実と付加情報の区別が必要です。

「事実」か「事実のような」情報なのかを区別する基本的な確認(テスト)方法です。

  1. 6W2Hで確認してみる
    Who(誰が)、Whom(誰に)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、How(どのように)、Why(なぜ)、How much(いくらで)の情報の過不足や整合性を確認してみる。
  2. いつ誰から聞いた事をもとにした内容か、出典やニュースソースを確認してみる
    信頼のある機関やメディア(一般的には警察や政府、行政機関、新聞社、テレビ・ラジオの報道番組など)によるものか、もしくは各種白書の類や信頼性の高い取材がもとになっているか、映像・画像・文書などの記録で裏付けされたものか、自分で見た聞いた事かなどをチェックしてみる。要は自分で「事実」だと説明できる材料が足りているかどうかの確認です。
  3. 出典やニュースソースの語尾を捉える
    話し手や文章の語尾は断定的か? 「~のもよう」「~とみられる」「~と聞かれる」「~と思われる」などは事実でない可能性を秘めた語尾で、まだ「事実」として伝えることができない内容を報道・文書化する際によく用いられる言葉です。
    テレビやラジオの報道・ニュース番組で話される言葉の語尾を注意深く聞いてみるといい学習になると思います。特に事件や事故の速報ニュースの際はどこまで「事実」で何が「事実のような」内容なのか区別の練習になります。
  4. 情報や文章を分解してみる
    見聞きした情報には大量の情報が含まれる場合があります。
    多くの情報から、単純な一文一文に分解してみましょう。
    下欄の重要欄の目撃情報を例にとると、

    「私が見た犯人は、身長や体格、服装などから男の人です。」
      ↓
    「私は犯人を見た」
    「犯人は身長や体格、服装などから男の人と判断した」

    となり、その上での6W2Hから不足情報を考えてみます。
    ・犯人を見たのは何時何分か?
    ・犯人を見たのは何処から見たのか?
    ・身長は何㎝くらいだと思ったのか?
    ・服装はどのような服で何色だったか? 等々

    この様な分解作業の上で一つ一つを「事実」とそうでないものに区別していきます。

重要

上記の「事実のような」情報に関する取扱い上の重要なポイントについて触れておきます。

テレビドラマや映画でもよく題材になるような内容で当たり前のことですが、大変重要なポイントなので頭に入れておくようにしましょう。

例えば、ある事件の目撃者○○氏が警察の聞き取りに対して次のように話したとします。
「私が見た犯人は、身長や体格、服装などから男の人です。」
あなただったら、何を「事実」と捉えますか?

この場合の「事実」は、『犯人を見たと言っている○○氏は、犯人は身長や体格、服装などから男の人です、と言っている。』です。


この聞き取りの段階では「○○氏は犯人を見た」「犯人は男性」は「事実」ではありません。後々「事実」となるかもしれませんが、まだ確証の得られていない「事実のような」情報です。
この段階での警察発表や報道では、おそらく『犯人を目撃したとみられる○○氏によると、身長や体格、服装などから犯人は男性であったもよう』といった口調で発表・報道されるものと想像できます。

ここから先は、現場周辺の防犯カメラ映像、他の目撃者の存在と証言、現場に残った犯人特定のための証拠・痕跡などで「事実」情報を増やしていくことになります。

つまり、目撃者が、見た犯人は身長や体格、服装などから男の人です、と話したこと自体は「事実」であっても、話した内容は証拠がない状況では「事実のような」情報であることを区別出来ることがとても重要です。

「事実」とそうではない情報の分類方法について

「事実」情報をまとめる手法・フレームワークについて知っておきましょう!

以下に、簡単にできる「事実」とそうでない情報の分類に関する手法を紹介しておきます。


どれもノートや紙(またはPC上でもOK)の真ん中に縦線を引いて、左右の欄の一番上に「is」と「is not」(もしくは「Fact」と「Fake」、「Fact」と「Fake」、「is」と「should」)と書きます。あとはその下の該当スペースに単純な一文を羅列していきましょう。
「事実」でない側にリストされたものについては、理由や「事実」とするには不足な情報をメモっておいた方が良いかもしれません。

上手くまとめるには、単純な語句や短文を用いるのがコツです。

  • 「is」と「is not」
    (「事実」と「事実ではない」もしくは「事実のような」情報の分類)
  • 「Fact」と「Fake」
    (「事実」と意図的な「事実のような」情報の分類)
  • 「As is」と「To be」(「is」と「should」)
    (「現状(事実)」と「あるべき姿(期待)」の分類)

情報整理がついた後は、目的に沿って「事実」側の情報から問題解決のための根本原因の想定をおこなったり、犯罪捜査での犯人・動機を想定したり、報道のストーリーを考えたりすることになります。

まとめ

記事全体のまとめです!

各項目の詳細は本文を参照してください。

  1. 「事実」とは、実際に起こった嘘偽りのない事柄のことです。
  2. 「事実」を正しく捉えるために必要な習慣づけがあります。
    1. データ化、数値化をする
    2. 「事実」と「事実のような」情報を区別する
  3. 「事実」と「事実のような」情報を区別する必要があります。
    1. 客観的ではあるものの「事実のような」情報
    2. 主観の入った「事実のような」情報
  4. 「事実」かどうかを確認する基本的な方法があります。
    1. 6W2Hで確認してみる
    2. いつ誰から聞いた事をもとにした内容か、出典やニュースソースを確認してみる
    3. 出典やニュースソースの語尾を捉える
    4. 情報や文章を分解してみる
  5. 「事実」とそうではない情報を分類する簡単な手法について。

以上