【学生・社会人 必読‼】問題解決ステップ②「問題分析・解析」

問題解決ステップ 問題分析・解析

今回は、以下の問題解決ステップ全体像の第二段階である「問題分析・解析」に焦点を当てて説明していきます。

問題定義 (Problem Definition)
本来あるべき姿と現状のギャップを定義します。
問題定義が具体性に欠けたり広範な場合は、問題の絞り込みを行います。
report-document

今回の解説対象となるステップ

問題分析・解析 (Analysis)
数値化によって各観点から事実を捉え分析します。
分析を踏まえ問題の発生原因の究明・検証などで解析を行います。
data-analysis
対策 (Actions)
問題解決のための課題を定め、それぞれに対しての対策を立案します。
課題や対策に対して優先度の評価をし、各対策のGo/NoGoの決定をします。
各対策案実施の評価方法と目標を定めます。
idea
効果の把握 (Measure)
各対策案の実施前と実施後の効果を把握します。
目標達成か否かを判定します。(達成→再発防止へ、否→問題分析・解析へ戻る)
Consulting Action
再発防止・レビュー (Solutions/Review)
再発防止のための歯止めを行います。
checksheet

問題分析・解析

より論理的に! より数値化を!

このステップは、「問題定義」の「真の問題」の洗い出しの部分でも触れたとおり、実作業内容は「真の問題」の洗い出しと問題分析・解析とで大差ない内容になりますが、ステップの目的が違います。

  • 「真の問題」の洗い出しのステップ 
      → 問題の絞り込みが目的
  • 問題分析・解析のステップ 
      → 原因の追究が目的

実際のビジネスシーンにおいては、以下の作業を行いながら問題の絞り込みを行い、「真の問題」(解決すべき問題)を見極め、問題定義をし、原因追及を行う場合が多いかもしれませんが、それぞれのステップの目的が違うことだけは理解しておいてください。

分析と解析

このステップの見出し項目は「問題分析・解析」となっていますが、「分析」と「解析」とはどういう意味で、どんな違いがあるのでしょうか?

辞書では以下のような説明が得られます。

ぶん‐せき分析】 (analysis)
①ある物事を分解して、それを成立させている成分・要素・側面を明らかにすること。「情勢を―する」
②〔化〕物質の検出・特定、また化学的組成を定性的・定量的に識別すること。
③〔論〕
 ㋐概念の内容を構成する諸徴表を要素に分けて明らかにすること。
 ㋑証明すべき命題から、それを成立させる条件へつぎつぎに遡ってゆく証明の仕方。

かい‐せき解析
①物事をこまかく解き開き、理論に基づいて研究すること。「データを―する」
(→)解析学の略。

出典:「広辞苑」(第六版)、広辞苑無料検索サイトより 

この説明について、ビジネスにおいては一般的に以下のような理解になっています。

  • 分析
    ある事象の内容や性質を明らかにするために、細かな要素に分けて数値化して表現していくこと。
  • 解析
    ある事象の発生原因について分析をもとに論理的に追求し、原因を特定していくこと。

数値化して分析を

分析対象の事象や業種などにより分析手法は数多くありますが、どのような切り口での分析をするのかによって以下のような分析があります。
また、数値の取り扱い方も実数値そのままの表現であったり、平均値や標準偏差などの統計データを用いる場合など様々です。

切り口別の分析手法の例

  • 統計分析
  • 市場分析
  • 顧客分析
  • 競合分析
  • 工程分析   など

データ分析や分析手法については、膨大な内容になりますので本記事での取り扱いはしません。
問題解決のためのデータ分析や解析に役立つ基礎知識となる「統計の基礎」や「QC7つ道具」については別途他記事で紹介していければと思いますが、多くの手法についてインターネット上にも情報は多いので”データ分析”や”分析手法”などのキーワードで検索してみてください。

原因の解析

分析データや事実情報をもとに、発生している問題の原因を特定していきます。
このステップに関しても多くの手法がありますが、必ず以下の流れに沿って進みます。

  • 問題定義
  • 分析
  • 分析データと事実情報をもとに原因の想定
  • 想定原因の裏付けとなる分析や事実確認
  • 原因の特定

 ※❷~➍は繰り返す場合もあります。

では、例に戻って問題分析と解析について整理してみたいと思います。下に示した「問題定義」終了時点での各例のマーカー部分に注目してください。

各例では、真の問題(解決すべき問題)を定義するまでの過程である程度の数値分析がすでに行われた形跡が見受けられます。例1では商品別に分類したうえで売上高数値の分析を行い商品Aの売り上げが問題であることを洗い出して問題定義しています。同様に、例2では時間帯別に細分化して分析してランチタイムの来客数が問題であること、例3では科目別の得点や問題別の得点を分析し世界史の大問3の得点が問題であることを洗い出しています。

さらに、各例では第一段階ともいえる解析も行われています。例1では競合他社が売れ筋商品Aへの対抗商品をリリースした事、例2では店周囲の企業群でリモートワークへのシフトが進んだこと、例3では世界史大問3は例年志望校特有の癖のある出題となっていることが記述されています。

例1 (経営者の場合)

本来のあるべき姿: 
決算上の経常利益が黒字となる。

現状: 
決算上の経常利益が赤字となった。

問題: 
決算上の経常利益が黒字であるべきであったが赤字となった。

真の問題(解決すべき問題): 
経費は予算内であったが、競合他社が売れ筋商品Aへの対抗商品をリリースしたため商品Aの売り上げが目標の25%減となり、それが原因で全社での売上高が目標の7%減となった。そのために決算上の経常利益は赤字となった。

例2 (飲食店の場合)

本来のあるべき姿: 
月商200万円以上が経営目標である。

現状: 
ここ3ヶ月の平均月商が150万円である。

問題: 
ここ3ヶ月の平均月商が目標から25%減の150万円に留まった。

真の問題(解決すべき問題):
店周囲の企業群でワークスタイルの変化が著しく、リモートワークへのシフトが進みランチタイムの来客数が四半期前に比較して25%減であった。そのために、ここ3ヶ月の平均月商が150万円となった。

例3 (大学受験生の場合)

本来あるべき姿:
志望校を見据えた9月の全国模試で合格判定Aとなる。

現状:
9月の全国模試結果で志望校の合格判定がBであった。

問題: 
志望校を見据えた9月の全国模試で合格判定Aを目指したが、結果は合格判定Bとなった。

真の問題(解決すべき問題):
志望校の受験科目である英語、国語、社会(世界史)において、世界史の大問3(例年、志望校特有の癖のある問題が出題されている)で全く得点できず、これが原因で合格判定Aの得点域に届かず合格判定Bとなった。

ここまでは、問題の絞り込みを目的とする「問題定義」のステップですので、次は原因追及目的ののステップに移行します。

原因追及のステップである問題分析・解析以降では例1をサンプルとして解説していきます。

例1において、なぜ競合商品のリリースで当社商品Aの売上が減少したのか、商品機能・仕様、商品価格、シェア、顧客評価、広告の観点で比較分析を行ったところ、商品価格において競合商品が当社商品Aより新製品キャンペーンで5%安く、ネットや店頭での新製品キャンペーン広告に投資していることが判明。この価格と広告での訴求が他社商品への乗り換えの原因であったと想定した。ここでさらに、顧客評価の内訳を分析したところ、価格と商品認知度に関する評価については競合商品の方が高評価を得ている結果となり想定原因の裏付けとなった。この一連の内容を、例1の内容に追加すると以下のようになります。

例1 (経営者の場合)

本来のあるべき姿: 
決算上の経常利益が黒字となる。

現状: 
決算上の経常利益が赤字となった。

問題: 
決算上の経常利益が黒字であるべきであったが赤字となった。

真の問題(解決すべき問題): 
経費は予算内であったが、競合他社が売れ筋商品Aへの対抗商品をリリースしたため商品Aの売り上げが目標の25%減となり、それが原因で全社での売上高が目標の7%減となった。そのために決算上の経常利益は赤字となった。

分析内容:
競合商品と当社商品Aの比較分析

 比較情報当社商品A比較優位性競合製品 
商品機能両者同じ両者同じ
商品仕様両者同じ両者同じ
商品価格¥〇〇〇〇〇¥〇〇〇〇〇×0.95
(キャンペーン価格)
商品の市場シェア約60%約15%
広告投資金額¥△△△△△推定¥△△△△△×1.2
顧客評価(価格)
顧客評価(商品認知度)
 

解析・想定原因:
当社より5%安いキャンペーン価格とネットや店頭での新製品キャンペーン広告による訴求により、当社商品Aの顧客が競合商品へシフトした。

想定原因の裏付け:
顧客評価の調査内容より
顧客評価(価格)    → 競合商品の方が高評価
顧客評価(商品認知度) → 競合商品の方が高評価

原因:
競合他社がリリースした当社売れ筋商品Aへの対抗商品の、当社商品Aより5%安いキャンペーン価格設定とキャンペーン広告での訴求。

例2と例3については、ここでは割愛します。問題解決ステップについての訓練だと思って是非ご自分で考えてみてください。

ここまでで、問題⇒分析⇒想定原因⇒裏付けの確認、という流れで原因が明らかにしてきました。つぎは、課題リストアップと実際に対策をとる課題を決めるステップとなります。

課題をもれなくリストアップ

このステップで重要なことは、「できる・できない」や「やる・やらない」は考えず、問題解決(原因を排除する)ために必要な課題を網羅することです。前述のMESE(ミーシーもしくはミッシー)や自責思考、場合によってはブレーンストーミングなどを活用してリストアップしてください。

このステップについても例1を使って考えてみます。課題として以下のようなものがリストアップされました。例としてまとめてみます。

課題リストアップ(例)

  • 価格以外での当社商品Aの優位性を訴求する
  • 商品Aの価格を下げる
  • 商品Aの価格を上げる(高級ブランド化)
  • 販路を拡大する
  • 販促キャンペーンを行う
  • 市場への商品Aの訴求のための広告を展開する
  • 現状のままで様子を見る
  • 商品Aから撤退する

優先度を決める(緊急度・重要度・実現性・期待効果・費用)

次に、網羅された課題に対して緊急度・重要度・実現性・期待効果・費用などの観点から評価をし、この段階で優先度をつけます。

評価は、下の注意事項に気を配りながら〇・△・×や1~3、1~5などでの点数評価をするのが通例で、一番右に各評価を総合的に見ての判断をします。
下に評価例を示します。

課題項目緊急度 重要度 実現性 期待効果 費用 総合評価
価格以外での商品A優位性の訴求××
商品Aの価格を下げる〇〇〇〇○○
商品Aの価格を上げる(高級ブランド化)××
販路拡大○○
販促キャンペーン
商品Aの訴求広告の展開〇〇〇〇
現状のまま様子見××〇〇×○○
商品Aからの撤退×××
 

この評価のには以下内容を基準・前提条件として考慮しました。

  • 商品Aの売上高の目標は変更なし
  • 商品Aの利益率は現状維持する
  • 商品Aの市場規模は3年後に2倍になりその後もロングテールが期待できる
  • 当社には既に運用しているインターネット販売サイトがあり利用可能
  • 商品Aの市場シェアをあげる
  • 現時点当社商品の高級ブランド化の戦略は具体的に検討されていない

注意事項

上記の評価をする際にはメンバー各自や担当者などそれぞれの判断で評価しようとするとまとまりません。基準や前提条件が必要になります。


通常評価の基準や前提条件は、会社の方針や戦略、目指しているビジネスモデル、市場動向、売上・利益・予算などの財務的な要求、顧客満足度、従業員満足度などになります。また、評価は各項目の総合評価の比較という相対的なものになりますので、基準を細かく決めての厳密な絶対評価を求める必要はありません。

前の評価結果から、総合評価・期待効果に〇がない課題は削除し優先度の高い課題に整理してみました。

課題項目緊急度 重要度 実現性 期待効果 費用 総合評価
商品Aの価格を下げる〇〇〇〇○○
販路拡大○○
販促キャンペーン
商品Aの訴求広告の展開〇〇〇〇
 

課題整理の結果を踏まえて、例1の「問題分析・解析」までの流れをまとめておきます。

例1 (経営者の場合)

本来のあるべき姿: 
決算上の経常利益が黒字となる。

現状: 
決算上の経常利益が赤字となった。

問題: 
決算上の経常利益が黒字であるべきであったが赤字となった。

真の問題(解決すべき問題): 
経費は予算内であったが、競合他社が売れ筋商品Aへの対抗商品をリリースしたため商品Aの売り上げが目標の25%減となり、それが原因で全社での売上高が目標の7%減となった。そのために決算上の経常利益は赤字となった。

分析内容:
競合商品と当社商品Aの比較分析

 比較情報当社商品A比較優位性競合製品 
商品機能両者同じ両者同じ
商品仕様両者同じ両者同じ
商品価格¥〇〇〇〇〇¥〇〇〇〇〇×0.95
(キャンペーン価格)
商品の市場シェア約60%約15%
広告投資金額¥△△△△△推定¥△△△△△×1.2
顧客評価(価格)
顧客評価(商品認知度)
 

解析・想定原因:
当社より5%安いキャンペーン価格とネットや店頭での新製品キャンペーン広告による訴求により、当社商品Aの顧客が競合商品へシフトした。

想定原因の裏付け:
顧客評価の調査内容より
顧客評価(価格)    → 競合商品の方が高評価
顧客評価(商品認知度) → 競合商品の方が高評価

原因:
競合他社がリリースした当社売れ筋商品Aへの対抗商品の、当社商品Aより5%安いキャンペーン価格設定とキャンペーン広告での訴求。

優先的な課題リスト:

課題項目緊急度 重要度 実現性 期待効果 費用 総合評価
商品Aの価格を下げる〇〇〇〇○○
販路拡大○○
販促キャンペーン
商品Aの訴求広告の展開〇〇〇〇
 

まとめ

問題分析・解析のステップについてイメージ出来たでしょうか?

次は「対策」(Actions)についてとなります。

以上